2023年1月1日「祈る」

聖書:テモテへの手紙一
説教題:祈る

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神さまを信じる者の最大の喜びは、祈れることです。しかも、神さまに向かって「父 よ」と祈れることです。私たちは、いつでも、どこででも祈ることができます。私はど なたかを訪問するとき、その道すがら祈りつつ向かいます。皆さんもそうでしょう。子 どもの相手をしながらフトしたときに祈ったり、介護をしながら神さまを呼んでいた り。祈ることは私たちの生きることそのものです。

使徒パウロは「そこで、まず第一に勧めます」と言っています。パウロは祈ることに よって自分の世界を変えてしまった人です。彼はとてもまじめに、ちゃんと生きていま した。人間的にも尊敬される人物でした。しかしかつての彼の心は自分の頑張りに埋め 尽くされていました。そして他人への愛や慈しみよりも怒りや憎しみで溢れていたよう です。そんなパウロが他の何にも先だってまず第一に祈ることを勧めています。この 「勧める」という言葉は、私の一番大好きなギリシア語の単語で言い表されています。 「勧める」の他にも「慰める」と訳すこともできます。祈ることは私たちへの勧めであ り、同時に祈ることは私たちの第一の慰めです。

2023年を迎えて、さがみ野教会は「祈る」を主題として、またテモテへの手紙一第2 章1節の御言葉を掲げています。「そこで、まず第一に勧めます。願いと祈りと執り成し と感謝とをすべての人のために献げなさい。」ここを読んで、文字通りにハッとしまし た。願いと祈りと執り成しと感謝と言っています。この内の「執り成し」はそもそも他 の人のために祈ることですから、すべての人のために執り成しの祈りをしなさいという のはよく分かる。ところがそれだけではなく、すべての人のために願い、すべての人の ために祈り、すべての人のために執り成し、すべての人のために感謝しなさい、と言っ ています。まず第一に、自分のための祈りではなくすべての人のための祈りをせよ、と 言っているのです。

この手紙は使徒パウロが既に老齢になった頃のものだと言われています。それに対し て受け手のテモテはまだ若い、新米の牧師でした。若輩牧師テモテに熟練牧師パウロが まずもって勧めたのは、他者のために祈ることでした。私は2001年に神学校に入りまし た。その年の秋、ルードルフ・ボーレンという老齢の先生が来日し、神学校で講演をして くださいました。「とりなし」という題名がついていました。もしも自分が今教会の牧 師になることが許されるとしたら最初に何をするか。恐らく、私たち自身のため、教会 のため、世界のための執り成しの祈りをする組織を整えることから始めるだろうとおっ しゃいました。ボーレン先生も私たちにパウロと同じ勧めをなさったのです。

そして、ボーレン先生は具体的な執り成しの祈りの方法も教えてくださいました。「9 日間の祈り」というものです。一つの事柄のために、9日間の集中した祈りをする。い くつかの先生の経験を話してくださいました。白血病の患者のための祈り。息子が自死 した女性のための祈り。印象的だったのは、先生が一人で祈るだけではなく、教会の仲 間にも共に祈ることを求めたことでした。祈ることで教会は「教会」になるのです。

祈るというのは私たちが神の御前に一体何者なのかを知ることでもあります。私たち は得てして自分のことで精一杯になってしまったり、自分にこだわりすぎたりしてしま います。しかし祈ることで私たちは自由になり、自分の世界を変えるのです。

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