2021年3月7日「信じる」という美しさ

聖書:ヨハネによる福音書10:31​〜42
説教題:「信じる」という美しさ


音声


動画




 今の季節は、教会のカレンダーでは「受難節」または「四旬節」と呼ばれます。イースターの前の日曜日を除く40日間、なので四旬節と呼ばれます。この期間、教会は主イエスさまの受難を覚えて祈りつつ時を過ごします。イエスさまの受難。すなわち、イエスさまが十字架の上にはりつけにされた。十字架に釘で打たれた苦しみ、そして、私たちに代わって神に裁かれて死んだ苦しみ。私たちの犯した罪の受けるべき罰の身代わりです。

 クリスマスの前のアドベントの時期になると、礼拝堂にロウソクを4本準備をして一週間ごとに一本ずつ火を灯します。教会によっては受難節にもロウソクを準備するようです。受難節の日曜日は六回あるので、六本のロウソク。但し、一本ずつつけていくのではない。最初は六本全部に火がついている。それを一週間に一本ずつ消していくのだそうです。イースターの一週間前、受難節最後の日曜日になると六本全部が消されてしまう。そうやって、世界が罪の闇に包まれていることを象徴するのだそうです。

 今日の聖書の御言葉はただならぬところから始まります。「ユダヤ人たちは、イエスを石で打ち殺そうとして、また石を取り上げた。」憎しみに駆られてイエスを石で打ち殺そうと、その手に石を握りしめた。本当に激しい怒りと憎しみがあってのことです。何に怒っていたのか?イエスさまは尋ねます。「わたしは、父が与えてくださった多くの善い業をあなたたちに示した。その中のどの業のために、石で打ち殺そうとするのか。」すると彼らは答える。「善い業のことで、石で打ち殺すのではない。神を冒瀆したからだ。あなたは、人間なのに、自分を神としているからだ。」イエスさまが神から命じられてしてきた善い業。生まれつきの盲人の目を開けたり、38年間病気だった人をいやしたり、姦淫の現場で捕まった女を赦したり、ユダヤ人が憎んでいたサマリア人のところへ行って語り合い、彼らを信仰に導いたり。イエスの前で石を握りしめている者たちも、それが「善い」業だということは認めないわけにはいかない。しかしどうしても認められないことがある。それはイエスが自分を神の子だと言っていること。つまり、イエスのような神であっては困る、それは自分が期待する神とは違う、認められない、ということです。

 そこに潜む問題を主イエスさまは旧訳聖書によって指摘しました。「わたしは言う。あなたたちは神々である」。これは詩編だ82編の言葉です。この詩編は読んでみるとかなりショッキングな詩編です。神様が私たちの不正を告発している。「いつまであなたたちは不正に裁き、神に逆らう者の味方をするのか。弱者や孤児のために裁きを行い、苦しむ人、乏しい人の正しさを認めよ」。そして、「あなたたちは神々なのか」と問います。かなり強烈な皮肉に満ちた問いです。あなたたちはまるで神であるかのように不遜に振る舞っているという指摘です。主イエスはその言葉を引用しながら、どうしてあなたたちは自ら神々であるかのような業を行っているのに、神のもとから遣わされた私が神の子だということを受け入れようとしないのか、と問うておられるのです。

 今週、東日本大震災から10年を迎えます。特に原子力発電所の事故により、今でも3万6000人以上の人が避難生活を強いられ、ふるさとを喪失しました。私はこの事故が起こるまで、原子力発電に関心を持っていませんでした。ところが、先ほどの詩編を見るとこのようにあります。
  彼らは知ろうとせず、理解せず
  闇の中を行き来する。(5節)
知ろうとしないこと、理解しようとしないこと自体が罪だと指摘しています。そうやって、弱者や孤児、苦しむ人、乏しい人を食い物にし続ける社会構造に加担することを裁く、と神は言われるのです。それは神々のように振る舞っていることに他ならないから。

 イエスさまは、ご自分が神から与えられてした善い業を信じよ、と言われます。イエスさまがなさった善い業。この「善い」という言葉は、実は11節にも出てきます。「わがしは良い羊飼いである。良い羊飼いは羊のために命を捨てる。」この良いと「善い業」の善いは同じ言葉です。更に、この言葉は「美しい」と訳すことができます。主イエスの業は美しい。その美しさは、美しい羊飼いとして羊のために命を捨てるところにもっとも鮮やかに表れます。

 私は、自分の業や行いを省みると、本当に辛くなります。あまりにも醜いからです。自分のことしか考えていないし、自分が今と同じ生活ができることが第一になっている。しかし、主イエス・キリストはご自身の命を捨てて私のためにすべてを与え尽くしてくださいました。このイエスさまの美しい業を信じるなら、私も美しいものにしていただける。私はそう信じています。

この記事へのコメント